British vs. American English

英語論文のイギリス英語とアメリカ英語はどう違うのですか?

1. シリアル・コンマ(and/or)

まずアメリカ英語を好むジャーナルの場合だと3つ以上の品目を以下の例文(2)と(4)のようにカンマで品目ごとに区切るシリアル・コンマを使わなければなりませんが、イギリス英語を好むジャーナルの場合、この規則は適応されません

(1) This study compared e-learning, classroom learning and blended learning conditions. (イギリス式)

この研究はインターネットを使ったeラーニング、従来の教室での学習、そして教室とインターネットを組み合わせた学習形態を比較した。

(2) This study compared e-learning, classroom learning, and blended learning conditions. (アメリカ式)

この研究はインターネットを使ったeラーニング、従来の教室での学習、そして教室とインターネットを組み合わせた学習形態を比較した。

(3) The lower risk of coronary heart disease in the Japanese population might be attributed to genetics, environment or both. (イギリス式)

日本に住んでいる人々に冠動脈心疾患のリスクが低い要因は遺伝、環境、またはその両方によるものであることが考えられる。

(4) The lower risk of coronary heart disease in the Japanese population might be attributed to genetics, environment, or both. (アメリカ式)

日本に住んでいる人々に冠動脈心疾患のリスクが低い要因は遺伝、環境、またはその両方によるものであることが考えられる。

アメリカ英語を好むジャーナルに出版されている英語論文でこのシリアル・コンマの規則が以下の例文(5)のように守られていない場合はうっかりミスの場合を除けば恐らく、カンマで区切られていない品目の間に何らかの関連があることが示唆されているはずです。

例文(5)のHong KongとJapanの間にはカンマがありません。

もし、これがアメリカ英語を使った英語論文で著者があえてこのHong KongとJapanの間にカンマを挿入しなかった場合は、このHong KongとJapanの間に何か関連があることが示唆されます。

ナイジェリアはアフリカにある国ですが、香港も日本もどちらもアジアに位置しておりIT環境もお互いに似通っていることからあえて著者がこのようにシリアル・カンマの規則を破って書いたであろうということです。

(5) This study investigated the attitude toward e-learning among university faculty members and their students’ academic performance in Nigeria, Hong Kong and Japan. (アメリカ式特殊例)

この研究は 大学教員のeラーニングに対する姿勢と学生の学業成績の関係についてナイジェリア、香港、日本で調査を行った。

2. In future と In the future

イギリス英語でもアメリカ英語でも「未来の漠然としたある時点」を表す場合は“in the future”を使います。

一方、イギリス英語では「現時点からすぐの未来、これから今すぐ」を表す場合には“in future”を使い、「未来の漠然としたある時点」を表す“in the future”と区別をつけるのが特徴です。

そのため、例文(7)では「現時点からすぐの未来に、これから今すぐ」実験が実施されなければならないことを表すので厳しい目で検証するとイギリス英語を好むジャーナルに投稿する場合は正確な英文ではないことがわかります。 

正解〇

(6)Additional experiments must be conducted in the future. (イギリス式&アメリカ式)

今後(未来の漠然としたある時点に)さらなる実験が実施されなければならない。

間違い×

(7)Additional experiments must be conducted in future.

現時点からすぐの未来に、これから今すぐさらなる実験が実施されなければならない。

一方、アメリカ英語だと「未来の漠然としたある時点」を表す場合も、「現時点からすぐの未来」を表す場合も常に “in the future”を使います。

つまりアメリカ英語を好むジャーナルにご投稿される場合には“in future”は使わないようにしなければなりません。

逆にイギリス英語を好むジャーナルにご投稿される場合にはご自身が「未来の漠然としたある時点」を意図しているのか「現時点からすぐの未来」を意図しているのか判断し“in the future”と“in future”を適材適所で使い分けるようにすることが求められます。

例えばイギリス英語を好むジャーナルにご投稿される場合は例文(8)では“in future”を使っているので問題ありませんが例文(9)だと正確性に欠けるためこのままでイギリス英語を好むジャーナルに投稿することは出来ません。

イギリス式ジャーナルへ投稿用

(8) Differences in the pre-analytic process must be controlled in future.

現時点からすぐの未来に、これから今すぐ事前分析の過程の差異を制御しなければならない。

アメリカ式ジャーナルなら良いがイギリス式ジャーナルだと間違い

(9) Differences in the pre-analytic process must be controlled in the future.

現時点からすぐの未来に、これから今すぐ事前分析の過程の差異を制御しなければならない。

ちなみに以下の未来のロボットの在り方に関する例文(10)と(11)は同じように見えますが実はかなり違うことを表していることになるのがおわかり頂けるでしょうか?

(10) Robots will assist with most of our daily chores in the future. (イギリス式&アメリカ式)

今後は(未来の漠然としたある時点に)ロボットがほとんどの日々の雑用を手伝ってくれるようになるだろう。

(11) Robots will assist with most of our daily chores in future. (イギリス式)

これから今すぐロボットがほとんどの日々の雑用を手伝う。

3. 細かいスペルの違い

ジャーナルの投稿規定にスペルの指示がある場合は以下のようにイギリス式、アメリカ式スペルの対応が必要になります。

-ourで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
behaviour behavior 行動
colour color
favour favor ~への支持を表明する
labour labor 陣痛
tumour tumor 腫瘍

-reで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
centre center 中心点
fibre fiber 繊維細胞
litre liter リットル

-ize または -seで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
emphasise emphasize 強調する
metastasise metastasize (がんなどが)転移する
minimise minimize 最小限にする
organise organize (考えなどを)体系化する
recognise recognize 識別する

-yzeで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
analyse analyze 分析する
catalyse catalyze 触媒作用を及ぼす
hydrolyse hydrolyze 加水分解する
paralyse paralyze まひさせる

-ence または-iceで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
defence defense 防衛、防御
licence license 認可
practise practice 実践、実務

-ae-または-oe-を含む語

イギリス式 アメリカ式 日本語
aetiology etiology 病気の原因、病因
amoeba ameba アメーバ
anaemia anemia 貧血
diarrhoea diarrhea 下痢
faeces feces 糞、糞便
fetus *以前はfoetusだったが今はfetusとなった。 fetus 胎児
gynaecologist gynecologist 婦人科医
haemoglobin hemoglobin ヘモグロビン、血色素
leukaemia leukemia 白血病
manoeuvre maneuver (高度な技術が必要な)手順、操作
oestrogen estrogen エストロゲン、女性ホルモン物質
paediatrician pediatrician 小児科医

特定のeを含む語

イギリス式 アメリカ式 日本語
acknowledgements acknowledgments 謝辞
ageing aging 年をとること、高齢化
judgement judgment 判断
sizeable sizable かなり大きな

母音とlを含む語

イギリス式 アメリカ式 日本語
cancellation cancelation 取り消し
labelled labeled ラベル付きの
modelling modeling モデリング
travelling traveling 旅行の、移動する、巡回の

lが重複する語

イギリス式 アメリカ式 日本語
enrol enroll 登録する
fulfil fulfill (義務・命令・使命などを)果たす、全うする
wilful willful 意図的な、故意の

-ogで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
catalogue catalog (図書館の)蔵書、(図書)目録
dialogue dialogue/dialog 協議、意見交換
homologue homolog 【生物】相同器官 【化学】同族体
monologue monolog ひとり芝居、長談義

-edで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
burnt burned 燃えた
learnt learned 学んだ

-wardで終わる語

イギリス式 アメリカ式 日本語
backwards backward 後方へ
forwards forward 前へ、前方に
towards toward ~の方へ、~に向かって

その他

イギリス式 アメリカ式 日本語
aluminium aluminum アルミニウム
grey gray 灰色の
mould mold モールド、型
per cent percent パーセント
plough plow すきで耕す、耕作する
programme program プログラム、予定
sceptical skeptical 懐疑的な、疑い深い
sulphur sulfur 硫黄

いかがでしたか?もちろんこれが全てではなくここでご紹介しきれていない英語論文におけるイギリス英語とアメリカ英語の細かい違いはまだまだあります。

ご自身の書かれた英語論文がジャーナルの投稿規定に合った適切な英語になっているかご心配な方はお気軽にご連絡ください。

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